秋田地方裁判所 昭和23年(行)20号 判決 1948年11月02日
原告
片野孝太郞
被告
秋田縣知事
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
請求の趣旨
被告が昭和二十三年三月二日、原告所有の別紙目録記載の土地に対して爲した買收決定を取消す、訴訟費用は被告の負担とする。
事実
原告は、請求の原因として、原告の世帶人員は七名で、他人所有の二反歩の土地を耕作して居る外、其の所有する別紙目録記載の十筆の山林(地目)、合計八反九畝四歩の大部分を開墾して、豆、馬鈴薯等を栽培し、之等の土地からの收獲物で生活を維持して居るのであつて、右山林を失ふことは原告一家の生活を危くするものであり、且つ居住町村内では居住者は山林を二町歩迄保有し得ることが法規によつて認められて居る。而して原告は本件山林以外に山林を所有して居ない、從つて本件山林は原告に其の保有が許さるべきものである、然るに被告は以上の事情を無視して本件山林に対し買收の決定を爲したもので、該決定は失当であるから之が取消を求める、と陳述し
被告は主文と同趣旨の判決を求め、原告主張事実中、原告が本件山林の所有者であることは認めるが、原告の世帶人員、本件山林の現況及原告が本件山林以外に山林を所有して居ない点は孰れも不知町村居住者が、其の居住地で、山林二町歩迄保有し得ることが、法規によつて認められて居る、との点は否認又被告が本件山林に対し買收の決定をした点に付ては、昭和二十三年三月三十一日秋田縣農地委員会が、原告の異議申立は成立たない旨の決定をした事実はあるが、被告が、本件山林に対し、買收の決定をした事実は否認する、と陳述した。
理由
原告の本訴請求は、秋田縣知事を被告として居る点竝に訴状記載の内容に徴すれば、原告所有の本件山林に対し被告の爲した自作農創設特別措置法に基く買收決定の取消を求めるものと認められるが、被告は之に対し斯る買收決定をした事実はないと答弁するに拘らず原告は右事実を認定するに足る証拠を提出しないので、結局右決定が爲されたものであることを認めることは出來ない、然らば右決定の存在を前提とする本訴請求は、 余の原告の主張に対する判断を待つ迄もなく、其の部分のみで既に失当たるを免れないから、之を排斥し、訴訟費用に付ては、民事訴訟法第八十九條を適用して、主文の通り判決するものである。
(目録省略)